以前の記事で
そもそも話が『伝わりやすい』『わかりやすい』には何段階かあるという話をしました。
今回は、逆です。
話が『分かりづらくなる』理由です。
まず、大前提としまして、伝えて側(話し手がわ)の大きな勘違いがあります。
それは、
1)一度言えば理解してもらえる
2)正確な表現こそ全て!
です。
どういうことか説明していきますね。
1)一度言えば理解してもらえる!
ドイツの心理学者『エビングハウス』という方をご存知でしょうか??
『人間は忘れる動物である』を実験によって証明した方です。
彼が行った有名な実験をまとめたもので
『エビングハウスの忘却曲線』が有名です。
これは、
新しく覚えた物事でも
20分後には、その42%を忘れ
1時間後には、その56%を忘れ、
1日後には、74%を忘れてしまう
という実験結果をもとに作られたものです。
つまり、その場では『あぁ。なるほどね!』となっても
1時間後1日後にはおおむね覚えていないということです。
自分は、
普段は研修講師やセミナー講師をしていますが、
逆にこれを利用して
休憩前後で話をまとめてもらったり、振り返りを行ったりしています。
また、
こういった意見もあるかと思います。
『メモとればいいじゃん!』って。
でも、残念ながら、
メモを『見直す』確率ってのも実験によって出ています。
メモを見直す確率は、92%!
違いますよ。
92%は『見直さない』
です。
こういった要素がありますので、
基本的に『人間は忘れる生き物』です。
だからこそ、
前回の話の3番目『聞いた話を頭で理解しイメージ(再現)できる』が大事になってきます。
また、
重要な部分は、繰り返し伝えるなどをして
この『イメージ(再現)』を確実にする必要があります。
面白いことに、人の記憶と学習の定着上
『考えた時間』より『考えた回数』に比例する結果が出ていますので、
繰り返しは思っているより重要なプロセスになります。
2)正確に表現しなければいけない
こう思っている方も多いようですが、
これも非常に有害といえる悪しき習慣です。
なぜなら、事細かに100%正確に伝える 事を意識すると
話が複雑になりかえってわかりづらい事が多くなります。
また、
詳細を話すときは
まずは全体の概要(アウトライン)の話をしてから、
その中の大事な点を部分・部分で話をした方が理解はしやすいです。
全体像の把握ができないうちに、細かい詳細を事細かく話すのは、かえって理解できなくなります。
これも例を出してみたいと思います。
例)
E-mailのアカウントとは何か?
A:「メールサーバにアクセスするための使用権のこと。そのメールサーバ上でメールアドレスを取得したユーザに与えられる権限であるので、通常はメールアドレスと一対一に対応する。メールアカウントを与えたユーザに対しては、一対のユーザIDとパスワードを割り当て、メールサーバ上に受信メールを保存するためのメールボックスを用意する。これにより、そのサーバ上でメールの送受信ができるようになる。また、メールサーバを利用する時のIDをメールアカウントということもあり、大抵はメールアドレスの「@」より前の部分がIDとなっている。(IT用語辞典より http://e-words.jp/)」
どうでしょうか?IT用語辞典より引用した
『正確な情報』ですが、
インターネットやPC初心者に上記の説明をしたところで理解してもらえるでしょうか??
では、
正確な情報ではないですが、次のような説明だとどうでしょうか??
A:「メールアカウントとは、Emailを受け取るため住所みたいなものです。はがきと一緒で、書いてある『住所』にメールが送られてきます。また自分がメールを送る時には、差出人として相手に伝わります。この『メールアカウント』が違うと、『別の人からのメール』と認識されます」
どうでしょうか?
おそらく
正確性 という意味では、10%も満たないですが、
相手に伝える という意味では、こっちの方が正しいと思います。
こういった
伝えるという観点から話をかみ砕き、
そして、その後のステップとして専門的な事を追加していく
ことが大事になってきます。
初めの段階で
事細かな正確性は、
伝えるという意味では不必要であり、そこにこだわる必要性はありません。
特に、専門的な話になればなるほど、
入口はざっくりと。
そして、相手のレベルに応じて少しづつ深堀していくことが大事です。
PS
教える側の知識として、
正確な情報は必要ですので、そこは間違えないでくださいね。
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